コラム
中小企業が賃上げの波を乗り越えるために ~業務改善助成金を活用しよう~
2023年は賃上げの機運が高まり、賃上げ率は3.60%となりました(※民間主要企業の春闘妥結状況)。2024年はさらに賃上げの機運が高まり、大手企業を中心に多くの企業が昨年を超える賃上げを行う見込みです。原材料や光熱費の値上がりによる経費の増大、最低賃金の上昇・・・ついていくのがやっと、という中小企業も多いのではないでしょうか。
そこで今回は「中小企業が賃上げの波を乗り越えるために」をお伝えしたいと思います。
なぜ賃上げ?
さて、そもそもなぜこんなに賃上げラッシュになっているのでしょうか?物価高によるインフレ、経済成長のため、など様々な理由がありますが、少子高齢化による人手不足感の強まりが大きく影響しています。今後日本の人口は減少していきますが、特に15歳~64歳の働く世代の減少が顕著です。
令和5年の労働経済白書によると、賃上げにより求人が紹介される確率は上昇し、また既存の社員のやる気向上や離職率の低下等の効果、仕事への満足度の向上や、生き生きと働けるようになる等の効果もあるとされています。
もっとも、労働者が重視する労働条件は賃金だけではなく、やりがいがあるか、裁量があるか、スキルが身に着くか、なども重視されるため、ハード面・ソフト面の両面から魅力的な会社を目指す必要があります。
賃金を引き上げても大丈夫?
なるほど、優秀な人材を確保したいから賃金を上げよう!と思うかもしれませんが、少し立ち止まって、賃金を上げても大丈夫か検討してみましょう。
まず、人件費だけが増加するケースを見てみましょう。
売上が変わらないのに人件費を上げてしまうと利益を圧迫してしまいます。経費の節約などで一時的には対処できるかもしれませんが、必要な投資もできなくなり、長期的に対応し続けることは困難です。
売上100万 原材料等30万 固定の経費10万 人件費50万 利益10万
↓(賃上げ)
売上100万 原材料等30万 固定の経費10万 人件費60万 利益0円
⇒少しでも原材料等が高騰すると赤字になってしまう。
では、作業効率の上がる機器を導入した場合はどうでしょうか。
機器を導入したことで、同じ稼働時間で、効率よく、より多くの製品を製造できるようになります(=生産性アップ)。生産量がアップするので原材料等の費用も上昇しますが、その分利益も増えます。
売上100万 原材料等30万 固定の経費10万 人件費50万 利益10万 ↓(機器を導入、生産量アップ) 売上140万 原材料等45万 固定の経費10万 人件費50万 利益35万 ⇒機器を導入したことで、多くの製品を製造できるようになり、利益も増加 ↓(増えた利益を人件費に分配(賃上げ)する) 売上140万 原材料等45万 固定の経費10万 人件費60万 利益25万
増えた利益を人件費に分配するので持続的な賃上げが可能になります。
賃上げの波を乗り越えるには
このように、賃上げをするためには生産性を上げる必要があり、賃上げと生産性アップは両輪で進めなければなりません。持続可能な賃上げを行うために、厚生労働省では「業務改善助成金」という制度を用意しています。
この業務改善助成金は、生産性向上に資する設備投資等(機械設備、コンサルティング導入や人材育成・教育訓練)を行うとともに、会社内の最低賃金を30円以上引き上げた場合に、その設備投資などにかかった費用の一部を助成するものです。(助成率や上限は会社の規模や賃金をいくら引き上げたかにより異なります。)
例えば、労働者20人の会社が、作業を自動化する機械を100万円で購入し、社内で最も賃金の低い3人について1時間当たりの賃金を30円引上げると、75万円が助成されます。
助成金を活用することで、100万円の機器が実質1/4の負担で導入でき、これにより生産性もアップできるので、賃上げを大きく後押ししてくれます。
助成金を活用するための条件
業務改善助成金を活用するためには、労災保険に加入している、労働保険料を滞納していないなどの基本的な条件のほか、地域の最低賃金から50円以内の賃金で働いている人がいる、という条件があります。
①最低賃金スレスレの人がいる、②生産性向上のためにやりたい取組がある、の2つに当てはまった場合は、業務改善助成金の活用を検討してみてください。
※詳しい条件等は厚生労働省のホームページをご確認ください。
まとめ
少子高齢化の進行により、賃上げの波は今後も継続すると予想されます。賃上げラッシュに焦らず、自社にあった方法で雇用環境の整備を進めていきたいですね。